陵墓
中国四国前方後円墳研究会は、2024年7月26日におこなわれた陵墓関係16学・協会全体会議で加入が認められ、24年度から陵墓公開、見学活動に参加することになりました。陵墓関係学・協会は考古学、歴史学、歴史教育に関わる団体で構成され、1976年に「「陵墓」の保護と公開を要求する声明」を発出してから今日まで、様々な機会に要望や声明を宮内庁に提出しています。私たちはその一員として前方後円墳研究の一環として陵墓研究を推進するとともに、研究活動の前提となる陵墓公開を求め、研究資料の共有に努めてゆきたいと考えています。
初参加の24年度の陵墓見学会は、立会調査見学会が7回、事前調査見学会が2回、立ち入り観察が1回の開催でしたが、立会調査1回を除き、ほぼすべての見学会に参加致しました。その記録は下記の通りです。なお、参加した見学会参加記は中四研だよりに《陵墓報告》として掲載する予定です。また、今年度の立ち入り観察時に陵墓関係学・協会が発出し、中四研も賛同した声明を掲げましたので、あわせてご覧下さい。
⚫︎立会調査見学会
後二條天皇陵外構柵その他整備工事(2024年10月24日(木) 栗林誠治参加)
神武天皇陵御休所建仁寺垣改修工事(2025年1月22日(水) 不参加)
東山本町陵墓参考地ブロック塀改修工事(2025年1月23日(木) 寒川史也参加)
誉田御廟山古墳(伝応神天皇)陵外構柵改修工事(誉田丸山古墳・栗塚古墳)
(2025年1月23日(木) 寒川史也参加)(中四研だより55号参照)
市野山古墳(伝允恭天皇)陵飛地い号外構柵改修その他工事
(2025年1月30日(木) 伊藤聖浩参加)
狐井塚古墳(陵西陵墓参考地)飛地ろ号ほか外構柵改修工事
(2025年2月19日(水) 金澤雄太参加)
神武天皇陵外構柵修繕工事(2025年3月6日(木) 澤田秀実参加)
⚫︎事前調査見学会
大山古墳(伝仁徳天皇陵)外堤整備工事予定区域の事前調査事業
(2024年11月29日(金) 寒川史也参加)(中四研だより55号参照)
百舌鳥陵山古墳(伝履中天皇陵)外堤の事前調査(2025年3月13日(木) 上田直弥参加)
⚫︎立ち入り観察
大山古墳(伝仁徳天皇陵)立入観察(2025年3月7日(金) 澤田秀実参加)
⚫︎陵墓関係17学・協会全体会議
2024年度第2回 堺市博物館(2024年11月29日(金) 寒川史也参加)
2024年度第3回 フェニックスアカデミー 301号室(堺市内)
(2025年3月7日(金) 澤田秀実参加)
⚫︎立ち入り観察事前記者会見
堺市役所本館5階記者クラブ会議室(2025年3月7日(金) 澤田秀実参加)
2025年3月7日
「第17回 陵墓立入り観察」に際しての意見表明
陵墓関係学・協会※
私たち考古学、歴史学分野の学術団体では、宮内庁が所管する陵墓について人類共有の重要な歴史文化遺産であるとの認識のもと、その保存と公開を求める活動を「陵墓関係学・協会」として連携して行ってきました。このたび、宮内庁の理解を得て「第17回 陵墓立入り観察」を実施するに際して、これまでの経過と将来への希望、活動の継承について以下の通り意見表明いたします。
陵墓となる古墳の墳丘立入りへの最初の要望は、1976年5月でした。以来、ほぼ例年にわたり宮内庁との交渉を重ねております。1979年10月には、宮内庁の陵墓保全整備工事にともなう事前発掘調査箇所を対象とした第1回限定公開が、大阪・白髪山古墳で行われています。2005年7月には、「陵墓の立ち入りについて(お願い)」を宮内庁に書面で提出しました。その際、具体的な11カ所の古墳・遺跡をリストとしてあげました。この要望に対して、宮内庁においては2007年1月実施の「陵墓の立入りの取扱方針について」が決められ、墳丘第1段(―墳丘の最下段上面のテラスの順回路)まで立入り観察が許可されるようになりました。第1回立入り観察は2008年2月奈良・五社神古墳でした。この新たな方針決定は、陵墓関係学・協会が継続して来た陵墓公開運動の結果によるものと評価しています。
立入り観察により測量図や絵図、写真、文献史料の検討では知ることの出来なかった墳丘各部の様子が、より詳細に把握できるようになったことは言うまでもありません。さらに墳丘の表面に露出した埴輪や葺石の状態について新たな知見を得ることにもなりました。また墳丘の遺存状況の観察は、古墳の保全環境対策といった新たな課題の発見につながるものと確信しております。
本日実施となる大阪・大山古墳(大仙陵古墳、大仙古墳)の立入り観察は、2005年の要望当初より第一候補として立ち入り許可を求めてきたところです。この間、渡濠という難問を抱えながら、今回、見学ルートの安全確保やその具体的準備など、宮内庁において多大なるご配慮をいただいたことを、ここに改めて感謝いたします。
陵墓となる古墳や遺跡は、公開において宮内庁管理にともなう制限があることは承知していますが、将来にむけては公開の拡充を進めると共に、精度の高い学術情報を得るための観察範囲や機会をさらに求めて参ります。
私たち陵墓関係学・協会では、社会の理解と協力が得られることを基本に活動の継続を、ここに表明いたします。
※京都民科歴史部会・考古学研究会・古代学協会・古代学研究会・地方史研究協議会・中国四国前方後円墳研究会
・奈良歴史研究会・日本考古学協会・日本史研究会・日本文化財科学会・日本歴史学協会・文化財保存全国協議
会・歴史科学協議会・歴史学研究会・歴史教育者協議会(50音順)